開催概要
令和5年度 第57回 看護研究学会開催のごあいさつ
公益社団法人東京都看護協会 会長 柳橋 礼子
令和5年度、看護研究学会にご参加いただきまことにありがとうございます。
学術推進委員並びに関係者・会員の皆様には日頃から当協会の運営にご協力を賜り心からお礼を申し上げます。
さて、今年度の看護研究学会は、3年ぶりに参集で開催することにいたしました。社会は日常を取り戻しておりますが、看護を取り巻く環境は、未だ回復途中にあります。引き続きの感染対策にご協力いただきながら運営してまいりたいと存じます。
第57回のテーマは「新たな時代の看護の創生~看護の価値を見直そう~」といたしました。コロナ禍を乗り越えた看護職一人ひとりに、新たな時代にむけた意思と覚悟があるのではと思います。コロナ禍では、それぞれの立場で最善の策を講じ、ベストを尽くしてまいりました。本日は改めて、将来に向けたこれからの活動を思い描けるような看護研究学会にしたいと考えています。
特別講演は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司先生をお招きして、「2040年問題と医療 新たな時代のウェルビーイング」というテーマでご講演をいただきます。
シンポジウムは、「ニューノーマル時代の新たな看護の取り組み」というテーマで、最先端で活躍されている4人のシンポジストにご登壇いただきます。
研究発表40演題に加えて、今年度からの新しい取り組みとして、看護協会事業に重要な役割を担っていただいています委員会にエントリーをしていただきました。委員会活動の報告を共有し、参加者の皆様との意見交換の場となるよう企画をお願いしております。ご準備いただいた委員の皆様のご協力に心より感謝を申し上げます。
その他、ランチョンセミナーや企業展示もございます。ぜひ、一日楽しんでご参加いただきますようどうぞよろしくお願いいたします。
本学会では、都内の様々な領域で活躍される皆様に交流していただくことで、将来に向けた看護の力を実感し、看護の発展につながる機会としたいと思います。また、明日からの皆様の活動の糧となりますことを祈念しております。
今後とも、東京都看護協会へのご協力とご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
特別講演
9:50~11:00 1階大研修室
テーマ
2040年問題と医療
新たな時代のウェルビーイング
共催 一般社団法人東京都日本病院会支部看護部分会
座長 立石 久留美 氏
一般社団法人衛生文化協会 城西病院 看護部長
演者 前野 隆司 氏
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長 工学博士
講演では、幸せについての従来の研究について等、最新の研究データも交えお話しいたします。
・幸せについて
・幸せの4つの因子
・自分らしく生きる
【略歴】
1984年東京工業大学卒業
1986年同大学修士課程修了
キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て現在慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務
2024年より武蔵野大学ウェルビーイング学部学部長就任予定 博士(工学)
専門は、幸福学、イノベーション教育、システムデザイン・マネジメント学など
【著書】
『ウェルビーイング』(2022年)
『幸福学×経営学』(2018年)
『幸せのメカニズム』(2014年)
『脳はなぜ「心」を作ったのか』(筑摩書房,2004年)など多数
日本機械学会賞(論文)(1999年)
日本ロボット学会論文賞(2003年)
日本バーチャルリアリティー学会論文賞(2007年)などを受賞
ビデオメッセージ
公益社団法人日本看護協会 会長 高橋 弘枝 氏
シンポジウム
テーマ
ニューノーマル時代の新たな看護の取り組み
座長 宮崎 隆 氏
地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立多摩総合医療センター 看護部長
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シンポジスト1
コロナ禍での教育実践から看護教育のDX化に期待すること相撲佐希子 氏
修文大学看護学部看護学科 基礎看護学教授
我が国のICT教育は遅れていましたが、COVID-19の影響で急速にオンライン授業が拡大し、教育活動でICTの活用が注目されるようになった。これからの教育はVR、MR、AIが普及し、看護教育も効率的で効果的な方法を手法を開発することが期待される。一方で、看護教育は座学だけでなく実習が不可欠であり、ICTの導入には抵抗感や違和感も生じることもある。しかし、COVID-19禍で臨地実習方法を変更する必要が生じ、ビデオ会議システム等を使用した模擬患者とのコミュニケーション実習が試みられた。今後の看護教育では、ICTを上手に活用し、現場での経験とのバランスを取りつつ、効果的な教育を実現する必要がある。
【略歴】
修文大学看護学部 基礎看護学教授 修士(看護学)、博士(学術)
看護師資格をもち臨床や看護教育の現場に即した研究を中心に成果をあげる。
2016年から看護技術教育にeラーニングを導入した研究を行い、現在のICTを活用した教育に至る。主に、動画を活用した自己の客観的評価や技術の自己練習Toolの作成などを情報工学や教育系の研究者とコラボレーションすることで専門性を活かした教材作成に取り組んでいる。また、急速に発展した情報化社会と学生のモラル教育が追い付いていないことへの懸念から情報モラル教育の必要性を説き、看護学生を対象にした情報モラルの育成にも力を注ぐ。
これらの研究成果については、テレビをはじめとするマスコミなどにも多数取り上げられ注目を受ける。主な著書として「ICTを使った看護教育・実習ハウツーBook」、「臨地実習における情報モラルガイド」と「DVDで学ぶ 臨地実習における情報モラル」等があり、多くの看護師や教育職の方に活用されている。 -
シンポジスト2
患者スマホを用いた看護の実践と発展澤田優香 氏
株式会社OPERe 代表取締役
現在、患者と医療者の適切なデジタルコミュニケーションを支援するシステムを開発中。看護師にとってデジタル化は「業務の代替」ではなく、「表現方法の進化」と考えている。日本のスマートフォン保有率は77%で、日常生活のコミュニケーション手段が大きく変化。医療機関でのデジタルコミュニケーションの表現方法を発展させていくうえで最も重要なのは「コミュニケーションの標準化」であり、これなくしてデジタルコミュニケーションの発展は難しいと考える。メリットとしては患者が情報を自分のタイミングで確認できることや、医療機関がリマインドメッセージを活用して患者の行動変容を促せる点が挙げられる。しかし、「対面コミュニケーションよりも意思疎通が劣る」というデメリットもある。看護が発展していく上でデジタルコミュニケーションは非常に重要であり、看護師が使うシステムも共に発展していく必要がある。
【略歴】
急性期病院で臨床看護師として働いたのち、病院経営コンサルティング会社に入社。多数の医療機関のコンサルティングや分析システムの開発などに従事し2020年6月に独立。株式会社OPEReを創業し、「患者と医療者のコミュニケーションハブになる」を掲げ、看護・医療事務に特化したデジタルコミュニケーション手段「ポケさぽ」の開発・提供を行っている。「TOKYO STARTUPGATEWAY」にて優秀賞受賞。東京都スタートアップ社会実装促進事業(2020年度)、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社が運営する1stRound(第8期)など、採択歴多数。 -
シンポジスト3
看護師免許は最強の資格!
~私らしい未来のために、今やるべき「3つのこと」~輿石光希 氏
ジョインハンズ株式会社 代表・書道家
看護師の資格は「最強」である。世の中が不況になり就職難と言われても、看護師の業界は不況知らず。仕事の選択肢も多い。2019年から続いている新型コロナウイルス対策についても看護師の仕事は必須で重要。医療業界以外で働く場合も看護師免許があると有利であり、AIが普及しても看護の仕事はなくならない。看護職の価値は不変。それほど「看護師免許は最強の資格」である。最強の看護師免許を自分の未来のために最大限活用するために、今やるべき「3つのこと」を伝える。
【略歴】
山梨県出身。小学生の時全身やけどをおい、ケロイド体質のため形成手術を3回受ける。その経験から看護師に憧れ看護師を目指す。日本大学医学部付属看護専門学校卒業し、日本大学板橋病院(5年)さいたま市立病院(17年)病棟師長歴、三慶会 指扇病院(3年)副看護部長歴任。2012年 ジョインハンズ株式会社設立。医療コンサルタントとして活動。書道家としても活動中。
【著書】
「ナースのトリセツ」木村情報技術株式会社2021年
「良い看護師の採用・マネジメント実践法(DVD・動画配信)」医療経営2022年 -
シンポジスト4
20年後の未来から今を見てみよう。看護の進化論は特定行為から始まる塚原大輔 氏
株式会社キュアメド 代表取締役 集中ケア特定看護師
看護師の特定行為に関する研修制度が、2025年までに10万人養成という目標を掲げ開始し、2024年で9年目を迎える。働き方改革法案により医師不足が課題化し、特定看護師の活用が期待されている。特定看護師が医療環境の変化に対応し、看護の進化を牽引する鍵となると考える。現状では養成数が当初目標の1/10程度であり、研修方法や人員確保等に課題がある。特定看護師を活用するために、外注先として研修を提供する弊社の理念は、効果的で効率的な特定行為研修を通じて実践に貢献する看護師を育成すること。未来の看護の進化を期待し、特定行為による進化を進め、20年後には地域や在宅で特定行為が一般的になり、看護の新たな価値が生まれると展望している。
【略歴】
修士(看護学)、クリティカルケア認定看護師、集中ケア特定看護師、聖路加国際大学臨時助教、東京医療保健大学大学院非常勤講師
2000年 青梅市立総合病院 看護局
2006年 杏林大学医学部付属病院 看護部 主任
2012年 公益社団法人日本看護協会 看護研修学校 認定看護師教育課程 主任教員(集中ケア)
2020年 順天堂大学医学部附属練馬病院 看護部
2021年 株式会社キュアメド 代表取締役